最近では寝たきり防止のために施設などでも積極的に離床時間を確保する傾向が見受けられます。ご自身で座位姿勢が取れない方は必然的に離床の選択肢として車椅子で過ごす時間が増えるのではないでしょうか?
車椅子に座る姿勢によっては知らず知らずのうちに「仙骨座り」といった姿勢になり褥瘡や表皮剥離の危険性が考えられます。
では仙骨座りとはどのような原因で生じ、どのような対策が必要かをここではお伝えしていきたいと思います。
【仙骨座りとは?】
「仙骨」とは骨盤を形成する骨のうちの一つです。
正しい座った姿勢であればで、仙骨や座骨に体重が分散されるため、一点に集中して圧がかかることはありません。
しかし車椅子の不適合や関節拘縮などにより身体が滑ったような姿勢で仙骨に圧がかかる「仙骨座り」と呼ばれる座位姿勢になってしまうことも少なくありません。
【仙骨座りになると?】
身体への弊害としては不良姿勢の助長及び褥瘡の形成ではないでしょうか?
姿勢が悪い状態で長時間座っていると、筋緊張の亢進が生じやすく、関節拘縮や更なる不良姿勢を引き起こしてしまいます。また、不良姿勢になることで内臓機能や呼吸の抑制が生じるなど悪影響を及ぼしてしまいます。特に高齢方では円背姿勢を助長してしまうことが多く、ポジショニングなどの適切な対応が必要となります。
また、仙骨に集中的に圧がかかることで表皮剥離や褥瘡を形成することも問題です。高齢の方の皮膚は栄養状態なども低下していることが多く、皮膚が脆弱であるため、思わぬ力が加わることで傷を作ってしまいます。そこから新たに感染症が生じてしまう可能性大いにありうるので注意が必要です
【仙骨座りの原因】
一番の原因としては「車椅子の大きさが適切でない」ことが原因です。
関節拘縮など身体機能はもちろんですが、環境面での要因が大きく影響します。
具体的には車椅子の座面の奥行きが大きすぎる場合やフットサポートが高すぎる場合、お尻が前方へ滑りやすく、仙骨座りになってしまいます。
車椅子を利用する高齢の方は円背傾向であることが多く、座った状態で身体をまっすぐに保持できないため、バックサポート(背もたれ)と隙間ができてしまいます。これも車椅子の選定や適合がうまく行えていない時に生じ、仙骨座りを助長してしまいます。
【対策】
最も大事なことは「正しい車椅子の選定とフィッティング」です。
まずは車椅子の選定が大切となります。選定のポイントとしては、①身体のずれを防ぐこと②体圧を分散させること③身体と車椅子の隙間を過分に作らないことが大事となります。ご自身の力で体位変換を行えない方にとっては、ずれや車椅子と隙間がある場合に、一度身体の向きが変わると一人では戻すことができないため、筋緊張の亢進や関節に負担がかかるなどの悪影響も生じてしまいます。
対策としては、座っている姿勢がおかしいなと思ったら、福祉用具の専門スタッフやリ理学療法士や作業療法士に相談し姿勢保持のためのポジショニングを行うなどの対応が必要です。
【まとめ】
車椅子は移動介助の手段のみでなく、座って過ごす時間が多い方にとっては生活の中心的役割を担います。
離床時間の確保は大切ですが、起こすだけでなくしっかりとその方の座位姿勢も評価し仙骨座りを予防していきましょう。