最近“人生100年時代”という言葉を耳にする機会が増えました。国政や地域の取り組みとしても高齢者の増加に伴い、平均寿命より健康寿命を延ばす方向へ力を入れているのが伝わってきています。
“予防医学”というとイメージとして筋力トレーニングなどの身体機能をイメージされる方が多いのではないかと思います。もちろん転倒による骨折を予防する事や生活習慣の改善も必要です。
しかし社会や家族の在り方の変化により、今までとは違った問題も生じてきています。例えば“孤独”などの問題です。
外見上では判断できない心の病や認知症もこれから増加していくことは間違いありません。
理学療法と作業療法
リハビリテーションを受けられたことがある方は、2つの名称を聞いたことがあるかもしれません。
どのような違いがあるかを簡単に説明すると理学療法は「機能回復のためのリハビリ」を、作業療法は「社会適応に向けた心と身体のリハビリ」を行う点です。
加齢に伴う認知症や精神疾患などは作業療法士が担当する領域です。
また作業療法の具体例としては、食事や更衣、金銭管理などのセルフケア、絵画や手芸などの創作活動が実際に多くの医療機関で実施されています。
特に“認知行動療法”は高いエビデンスが証明されており、作業療法ではもちろん心理カウンセラーなどでも幅広く用いられているリハビリ技術です。
レクリエーションもリハビリ?
リハビリというと敷居が高く、病院やクリニックに通わなければいけないと思いがちですが、介護保険を利用されている方が通所される介護の現場でも同様な取り組みが行われています。
主に介護保険を利用される方は、病状がある程度安定され生活期でのリハビリの必要性が高い方が多いです。
特に介護の現場では作業療法と同様に各種ゲームなどのレクリエーション、手芸などの創作活動がサービス内容に盛り込まれている事業所が一般的です。
普段、介護サービスを利用されている方は、特に意識をされていないかと思いますが、実は介護現場で行っているレクリエーションは医療機関で作業療法士が行うリハビリと類似した効果を引き出すことが目的として行われています。
作業療法協会のガイドラインにも“各種ゲーム”“創作活動”は具体的な作業療法と明記されています。
介護サービスでレクリエーションなどに参加されている方は、知らず知らずのうちに心の病や認知症の予防のためのリハビリに取り組まれているということです。
集団での作業が心身に及ぼす効果
多くの介護現場では集団での作業が推奨されています。これは“承認欲求”を満たすのに非常に効果的です。
人は他者に認められることで感情の安定化や意欲の向上がみられます。
集団で作業することで、共通のテーマを通してお互いの役割を認識し心身に相乗効果を及ぼします。
必ずしもグループの人間関係によってスムーズに行えるとは限りませんが、上手くいかない場合でも集団内で解決する方法を検討することや、共通の話題ができるため認知面、精神面に関して効果的とも言われています。
介護現場での創作活動やレクリエーションには、認知症や心の病を予防するという“作業療法としてのリハビリ効果”も期待されています。
平均寿命の延長に伴い、認知面や心の健康は、より重要になります。
そのためにも、集団で楽しく取り組める創作活動やレクリエーション活動を通して、知らず知らずのうちにリハビリが行える介護現場などの環境整備が必要と思われます。