今、介護の現場で起きていることとして取り上げられる機会が多い認知症高齢患者についてどのようなイメージがありますか?

物忘れや徘徊、暴力などいいイメージを持たれている方はいないと思います。

しかし認知症だからと言って人が人でなくなるわけではありません。

フランス発祥の「ユマニチュード」といった言葉をご存知でしょうか?

ユマニチュードは高齢者や認知機能が低下した方に対して感情、言語、知覚による包括的なコミュニケーション技法で、「人間らしさ」に重点を置く哲学でありケアの技法です。

今回はユマニチュードの哲学に基づいて、人間関係を作るためのステップについて説明していきたいと思います。

 

【出会いの準備から始めよう】       

まずケアにおいて最初に関わる際は、相手に人が訪ねてきたことを伝えることがポイントになります。具体的にはインターフォンやノックなど私たちが通常行っていることで来訪を伝えますが、もし相手の反応がなければ、ベッドの足元やベッドボードなど徐々に空いての近くでコンコンとノックして相手の反応を待ちます。ノックを通して相手の返事を待つというコミュニケーションが医療や介護現場だとできていないのも事実です。

まずはしっかりと相手に来訪を伝えるようにアプローチしてみましょう。

 

【ケアの準備だけしよう】

次にケアを始める準備を行わなければなりません。ここで重要なのはケアをするために来たのではなく、相手に会いに来たということだけを伝えなければなりません。

方法としては正面から近づいて瞳と瞳を合わせます。時間にして3秒以内には話しかけますが、ケアの内容については準備が終わってから提案します。

具体的な目安としては、話しかけながらボディタッチが行えたら話始めるがいいでしょう。

もし準備ができそうになければ、時間をおいて再度来訪から行う事も相手の意思を尊重するためには大切なことです。

 

【知覚を連結する】   

ユマニチュードでは「見る」「話す」「触れる」の技法がありますが、これらのすべてを用いて相手を大切に思っていることを伝えていきます。

人は充足しているときは負の感情が入りにくく、認知症高齢患者においても暴力性などはみられにくいとされています。3つの技法のうち2つ以上を組み合わせ、相手にリラックスできる感情を伝え続けていくことに重点を置きましょう。

 

【感情の固定を試みる】      

認知症高齢患者の多くは相手が誰であるか分からない場合が多いですが、自分にとって優しい人かそうでないかといった記憶は残りやすいです。

そのため、ケアをする際は相手にとって優しい人といった印象、感情を固定して関係づくりを進めていく必要があります。

前回会った時この人は優しい人だったという認識の積み重ねでいい人間関係を記憶してもらうように心掛けることが大事です。

 

【再開の約束をとりつけよう】

私たちはお別れの挨拶として「また会いましょう」といった言葉を用いますが、ケアの現場では十分に活用されていないのではないでしょうか。

もちろん認知症により挨拶や約束を覚えることは難しいかもしれませんが、優しい人が自分に伝えてくれた言葉は感情を刺激します。

ケアが終わり退室する際は、必ず次回の約束を取り付けましょう。

 

【まとめ】                                                                  

認知症の高齢患者と人間関係を構築していくことはとても難しいです。

負の感情をもって接すると、知らず知らずのうちに相手に伝わり、攻撃性を刺激してしまうかもしれません。

まずはユマニチュードの哲学に基づいたステップを繰り返し行うように心掛け、相手にとって信頼できる関係づくりを目指し、ケアの関わりを持つことを意識して取り組んでみて頂ければと思います。

 

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